不動産相続をすることになった場合、必要な税金を計算したり、数種類の必要書類を準備したりする必要があるため、初めての方は負担に感じるかもしれません。
今回は、「不動産相続が必要になったけれど、どのくらい税金がかかるの?」と不安を感じている方のために、不動産を相続した際に必要な税金の計算方法、控除制度、注意事項などについて解説します。
不動産相続に必要な税金とは
不動産を相続した時は、2つの税金を支払う必要が生じます。ここでは、それぞれの税金の概要を説明します。
・相続税
・登録免許税
相続税
亡くなった方(被相続人)の財産を承継することを「相続」といい、一般的には配偶者や子供などが相続人にあたります。この際に相続の対象となる財産の総額にかかるのが「相続税」です。
登録免許税
相続するにあたり、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります。この「相続登記」を行う際は、「登録免許税」がかかります。
相続登記の登録免許税率は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
固定資産税評価額とは、土地や建物などの評価方法を定めた「固定資産評価基準」に基づき、各市町村(東京23区は都)が個別に決めたものです。
また固定資産税評価額は、市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細」に記載されているため、最新のものを参照してください。
不動産相続に必要な税金の計算方法
ここからは、相続税の計算方法について解説します。基本的に相続税は、遺産総額を出してから計算します。そのため、不動産相続のみの相続税を算出することはできません。
不動産以外の遺産、家財などの総額を元に計算していき、各相続人実際に取得した取得額に応じて相続税額を按分する形になります。
土地の評価方法
土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式とは、国税庁のサイトで公表している相続税路線価をもとに計算をする方法です。多くの都市部や住宅地は、この計算方式を使って計算します。
一方、相続税路線価が定められていないエリアでは、倍率方式で計算をします。前述した「固定資産税課税明細」に記載されている「固定資産税評価額」に、国税庁のサイトで公表している倍率をかけて算出します。
建物の評価方法
建物の場合、「固定資産税課税明細」に記載されている「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額となります。
建物の場合、新築時の評価額は請負工事金額の約50~60%が目安とされていますが、家の規模や構造、築年数などによって異なってきます。評価方法は戸建てでもマンションでも変わりません。
不動産相続の際に活用できる控除や特例
ここでは、「不動産相続の税金を少しでも少なくしたい!」と考えている方のために、知っておくべき制度をご紹介します。活用できる控除・特例制度には、以下のようなものがあります。
・小規模宅地等の特例
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
小規模宅地等の特例
評価額を軽減する代表的な制度が、相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」です。
この特例に含まれる「特定居住用宅地等の特例」は、被相続人の自宅の敷地を、配偶者や同居していた親族(子など)が相続した場合に、330㎡(約100坪)までの部分については課税価格が80%引き下げられ、20%になるというものです。
同居していない親族(子など)でも特例が受けられるケースもありますが、「被相続人に配偶者も同居親族もいない」などいくつかの要件を満たす必要があるため注意が必要です。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が不動産相続する場合、1億6,000万円までの相続財産が相続税の課税対象になりません。また、法定相続分の範囲内であれば、1億6,000万円以上の財産を相続しても相続税はかからないため、配偶者の相続税負担はほとんどありません。
未成年者控除
相続人が未成年者の場合、相続税額から一定額を控除できます。
控除額の計算式は、「(20歳-相続時の年齢)×10万円」です。なお、相続時の年齢は満年齢で計算するので、15歳8カ月であれば15歳として計算します。
不動産相続の注意事項
ここでは、不動産を相続する際の注意事項をまとめていきます。
死亡日の翌日から10カ月以内に申告する
相続税は「亡くなった日を知った日(通常の場合は死亡日)の翌日から10ヶ月以内」に、以下の手続きを済ませる必要があります。
①被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に「相続税申告書」を提出
②相続税の納税
相続税申告書の提出が遅れた場合は無申告加算税、相続税の支払いが遅れた場合は延滞税の加算対象になります。「相続税申告期限=税金の納付期限」となるため、どちらか一方が遅れても、ペナルティの対象になってしまいます。
また、申告や納付期限を過ぎると、配偶者控除や小規模宅地等の特例のような各種特例が使えなくなってしまいます。気持ちの切り替えに時間がかかったり、他の手続きが忙しかったりと、先延ばしになってしまうケースも少なくありません。相続税申告は早めに取り掛かることが大切です。
相続後の活用方法を考えておく
別の持ち家に住んでいる場合、不動産を相続しても使い道に困ってしまうケースもあります。そのため、相続する前に、それぞれの活用方法を考えておくことが大切です。
ここでは、戸建てとマンションの活用方法を解説します。
・戸建てを相続する場合
戸建てを相続したものの居住予定がなく、そのまま空き家になるケースも少なくありません。この場合、固定資産税や都市計画税の課税標準額は特例により減額が受けられます。
ただし、定期的に手入れを行わず、安全面や衛生面で支障をきたすような状態まで放置してしまった場合、「特例空き家」に指定される可能性があります。「特例空き家」に指定されると、特例の対象外となるうえ、「非住宅用地」として課税されてしまうので注意が必要です。
空き家として所持するだけでも、固定資産税が毎年かかってしまいます。活用する予定がない場合は、売却を検討すると良いでしょう。
・マンションを相続する場合
マンションを相続する場合、住む以外にも「賃貸に出す」「売却する」といった選択肢があります。
賃貸に出す場合は、空き家のままよりも管理しやすく、家賃収入で固定費の支払いも可能になるメリットがあります。
ただし、中古マンションは築年数が古いほど借り手が見つかりにくいデメリットがあります。築年数が古い場合は、リフォームしてから賃貸に出す方法も検討する必要があります。
まとめ
相続税申告が初めての方は、不安に感じる方も多いと思います。不動産に関わるさまざまな手続きや税制度も、あらかじめ分かっていれば心の準備ができるのでおすすめです。
また、不動産相続は一定の条件を満たすことにより、控除や特例を受けられます。早めに専門知識のある不動産会社などに相談して、不動産相続をどのようにするか考えておくと安心ですよ。ただし、適用期限を過ぎてから売却すると控除が受けられず、税金を払わなければならなくなってしまいます。