不動産を相続した場合に行う必要があるのが不動産の名義変更手続き(相続登記)です。
名義変更手続きは専門家に依頼する方も多くいますが、自分で行うことも可能です。
ここでは、不動産相続の名義変更手続きを自分で行う場合の流れと、手続きの際に必要になる登録免許税の計算方法をご紹介します。
不動産相続の名義変更を自分で行う際の手順
不動産相続の名義変更の手続きは自分でも行えます。
相続登記は登記申請書と必要書類を不動産を管轄する法務局に提出します。
STEP1 名義変更に必要な書類を準備する
・戸籍謄本
遺言書がある場合は被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本、遺言書がない場合には被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
さらに、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
・被相続人の除票
被相続人が登記上の所有者と同一人物であることを確認するため、被相続人の除票を提出します。
除票の代わりに戸籍附票でも可能です。
・遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書
遺言書がない場合、遺産分割協議により相続を行います。
遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・捺印します。
相続登記ではこの遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書も必要です。
遺言書がある場合は遺言書と検認調書または検認済証明書(自筆証書遺言の場合)が必要です。
・不動産相続をする人の住民票
不動産を相続する人の住民票を提出します。
住民票の代わりに戸籍附票の提出も可能です。
・固定資産評価証明書
登記申請の際には登録免許税を支払う必要があります。
このとき、登録免許税の確認のため、不動産の固定資産評価証明書を提出します。
固定資産納税通知書に同封される課税明細のコピーでも可能です。
STEP2 登記申請書を作成する
定められた書式で登記申請書を作成し、必要書類を貼付して法務局の窓口に提出します。
登記申請書の書式は法務局のホームページで確認できます。
STEP3 法務局での申請手続
不動産の所在地を管轄する法務局で申請手続をします。
申請後、不備がなければ1週間程度で登記完了証と登記識別情報通知書が公布されます。
そして、事前に伝えられた予定日に法務局に書類を取りに行きます。
不動産相続でかかる登録免許税
「相続による所有者移転登記」つまり、不動産相続の名義変更では登録免許税がかかります。
自分で相続登記をする場合、登録免許税も計算して納付する必要があります。
登録免許税とは
登録免許税とは、登録免許法に基づき、不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などに対して所在を明確にする届出をする際に課される税金です。
税率はケースにより異なり、相続登記の際の登録免許税の税率は、固定資産税評価額(不動産価格)の0.4%です。
ただし、相続人以外の人が遺言により取得した不動産を登記する場合、税率は0.2%となります。
登録免許税の求め方
1.計算に必要な書類を用意する
登録免許税を算出するためには、登記する土地の評価額を知る必要があります。
土地の評価額は「固定資産税課税明細書」または「固定資産税評価証明書」で確認できます。
課税明細書は毎年4~6月に送付される固定資産税納税通知書に同封されていますので、被相続人の郵便物を確認してみましょう。
課税明細書が手元にない場合、役所で固定資産税評価証明書を取得できます。
これらの書類のうち、「評価額」または「価格」と表記された金額を確認します。
2.課税標準額を算出する
評価額が確認できたら課税標準額を算出します。
課税標準額は相続人の相続対象であるすべての不動産の評価額を合算し、1,000円未満を切り捨てた額です。
例えば評価額が25,035,840円の場合、25,035,000円となります。
3.税額を計算する
求めた課税標準額に登録免許税の税額をかけ、100円未満を切り捨てます。
上で計算した課税標準額25,035,000円に税率0.4%をかけますので、
25,035,000×0.004=100,140
となり、100円未満を切り捨てると100,100円となります。
相続登記の登録免許税は免税される場合がある
登録免許税は一定の条件に当てはまる場合、免税されることがあります。
登録免許税が免税されるのは
1.相続登記をする前に相続人が亡くなった場合
2.相続する土地の価格が100万円以下の場合
です。
相続登記の免税に関しては期限や条件を法務省のホームページなどで事前に確認しておきましょう。
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付方法は納付書、収入印紙、オンラインの3つの方法があります。
・納付書
金融機関または税務署の窓口で納付書をもらい、金額を記入したうえで納付手続きをする方法です。
発行された領収証書を法務局に登記申請書とともに提出します。
・収入印紙
法務局内や郵便局で税額分の収入印紙を購入し、登記申請書に貼り付けて提出する方法です。
一般的に登録免許税が3万円以下の場合に行う方法です。
・オンライン
インターネットバンキングやATMを利用して納付する方法です。
注意点は事前に金融機関での手続きが必要な点、利用は電子納付に対応している金融機関に限られるという点です。
不動産相続の名義変更は3年以内に行う
これまで、相続した不動産の相続登記には申請期限が設けられていませんでした。
しかし、名義変更したまま放置されて所有者が分からない土地や建物が多く存在することとなり、問題となっています。
このことから、2021年4月21日に相続登記の義務化が決定しました。
2024年3月31日までは、相続した土地や建物の名義変更に申請期限はなく、名義変更しなくても罰則はありません。
2024年4月1日からは相続した土地や建物の相続登記が義務化され、不動産取得を知った日から3年以内に名義変更しなければ10万円以下の過料の罰則が設けられています。
2024年4月からはすべての不動産に対して義務化されますので、2024年3月以前に取得した土地でも2024年4月1日から3年以内に相続登記が必要です。
不動産相続の名義変更は専門家に依頼するとスムーズ
不動産相続の名義変更の手続きは、必要書類も多く登記申請書の作成や税額の計算を自分で行わなければならないため、大きな負担がかかります。
この場合、費用はかかりますが専門家に依頼した方が書類に不備が起こるリスクも減らせ、手続きを確実にスムーズに終えられます。
あらかじめ不動産相続が発生すると分かった時点で専門家に相談しておくと安心です。