不動産売買ではさまざまな費用がかかります。
特に注意が必要なのは税金です。不動産の種類や面積などの条件により税額が変動します。
今回は、不動産売買で不動産を売却するときにかかる税金と、有効な税金対策の方法をご紹介します。
不動産売買の流れ
不動産を売却するときの流れ、購入するときの流れはそれぞれ以下のようになります。
不動産を「売却する」流れ
不動産を売るときの流れは次のようになります。
1.不動産会社に査定の依頼をする
2.媒介契約の締結
3.売却活動
4.買主と不動産売買契約を締結する
5.物件引き渡し・決済
6.確定申告
不動産を「購入する」流れ
不動産を購入するときの流れは次のようになります。
1.希望条件の整理・情報収集
2.資金計画
3.物件選び・住宅ローン選び
4.内覧
5.購入申し込み
6.住宅ローンの事前審査
7.契約内容の確認・重要事項の説明
8.不動産売買契約の締結
9.住宅ローンの本審査・契約
10.引き渡し・融資実行
不動産売却にかかる平均的な期間
不動産売却にかかる期間は平均3~9か月が目安といわれています。
だいたい半年程度はかかると考えておいた方が良いでしょう。
売却期間は物件の種類によって幅があり、マンションは6か月程度、戸建て住宅は11か月程度と、戸建てよりもマンションの方が早く売れる傾向にあります。
また、築年数や地域、立地条件によっても売れやすさは異なるため注意が必要です。
古い物件やあまり人気のないエリアでは売却までに1年以上かかるケースもあります。
売却期間の目安はあくまでも参考程度にとどめておき、早期売却を目指したい場合は、不動産会社に相談しましょう。
不動産売却でかかる税金
不動産売却でかかる税金は印紙税、登録免許税、住民税・復興特別所得税、譲渡所得税です。
印紙税
不動産を売却する際、不動産売買契約書に印紙を貼らなければなりません。
印紙税の額は不動産売買契約書に記載されている金額によって変動します。
不動産売買契約書に記載されている金額が10万円以上の場合は、令和6年3月31日までは軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
登録免許税
不動産売買時の名義変更でかかる税金が登録免許税です。
不動産の売却により所有権移転をする場合には、「固定資産税評価額×2%」で算出します。
ただし、令和8年3月31年までは、軽減税率が適用され、税率が1.5%となります。
本則税率 | 軽減税率 |
固定資産税評価額×2% | 固定資産税評価額×1.5% |
住民税・復興特別所得税
不動産を譲渡して利益が出た場合、その利益を譲渡所得として住民税、所得税がかかります。
令和19年(2037年)12月31日までは復興特別所得税も加算されます。
譲渡所得税
個人が不動産を売却したときに譲渡所得が生じると、譲渡所得税が発生します。
譲渡所得は次の式で計算されます。
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用
譲渡所得がプラスとなり、譲渡益が発生すれば税金が発生します。
譲渡所得税は次の式で求めます。
税金=譲渡所得×税率
税率は不動産の所有期間で変わります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超えている場合は「長期譲渡所得」となります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超える土地・建物 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
不動産売却の税金対策
不動産売却ではご紹介したとおり、さまざまな税金がかかります。しかし、控除や特例などを利用することで税金対策が可能です。
売却時にはご紹介する方法を参考に、かしこく税金対策するとお得になります。
税金対策1:3,000万円の特別控除を利用する
居住用財産(マイホーム)を売却したときに譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
この特例を利用すると譲渡所得にかかる税金は次のように計算されます。
税額=(譲渡所得-3,000万円)×税率
この計算により、譲渡所得が3,000万円以下の場合、所得税と住民税は課税されないことになり、税金対策として大きな効果があります。
3,000万円の特別控除の特例が適用となるマイホームは、次の条件を満たしている場合です。
・住宅に住まなくなってから3年以内に売却する
・売却までにそのほかの土地を活用して利益を得ていない
・売却年から3年前までにこの特例を受けていない
・売買相手が親子などの特別な関係にない
税金対策2:「特定居住用財産の買い替え特例」を利用する
所有期間が10年を超えるマイホームを売却し、一定期間内に新たなマイホームを取得した場合には、譲渡所得への課税を繰り延べできる特例が利用できます。
これを「特定居住用財産の買い替え特例」と言います。
注意点は税金が控除されるわけではなく、繰り延べされるという点です。
売却時の譲渡所得には課税されませんが、買い替えをした場合には繰り延べ分を含めて課税されます。
マイホームの売却金額と新しいマイホームが同額以上の場合、税額は全額繰り延べです。
新しいマイホームの方が安い場合、差額に税金がかかります。
また、この特例は3,000万円の特別控除や軽減税率と同時に適用できません。税金対策の効果を比較して検討するようにしましょう。
税金対策3:「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」を利用する
マイホームを売却して赤字になった場合、住宅ローンの残債を支払えないケースや、損失が出た状態で新たに住宅ローンを利用して新しい住宅を購入するケースもあると思います。
このような場合を救済するために設けられているのが、「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」です。
この特例を受けると、売却の損失とほかの取得との間で損益通算ができ、確定申告により納め過ぎた所得税の還付が受けられます。
損失金額は最大3年間の繰越が可能です。
不動産売買を検討している場合は早めに専門業者に相談すると安心
不動産売買の流れや不動産を売却する際にかかる税金についてご紹介しました。
控除や特例などを活用することで税金対策が可能です。事前に条件を調べておき、かしこく活用すると税金がお得になります。
不動産売買にはさまざまな手続きが発生するだけでなく、控除や特例に関するルールも細かく、複雑です。
不動産の売却を検討している場合は、早めに不動産売買の専門業者に相談しておくと安心です。