相続する財産の中には、不動産が含まれていることが少なくありません。しかし、持ち家があったり、居住地から離れていたりと住む予定がない場合は、不動産相続を放棄をする方法があります。
相続放棄は煩わしい手続きやトラブルを避けられるメリットだけではなく、デメリットや注意点もあります。
今回は、「不動産相続の放棄を考えているけど、初めてのことだからスムーズにできるだろうか…。」と不安を感じている方のために、不動産相続の放棄に必要な手続き、注意点、メリット・デメリットなどについて解説します。
不動産相続を放棄する場合の手続き方法
土地を相続放棄するには、家庭裁判所へ相続放棄の申し立てが必要です。また、相続放棄は、被相続人の死亡の事実を知ったときから3か月以内に行う必要があります。
ここでは、不動産相続を放棄する際に必要な手続きを、5つのステップに分けて解説します。手順を把握して、正しい手続きを行いましょう。
①相続財産の把握
被相続人から相続する遺産は、預貯金や不動産などの「プラスの財産」と、借金関係の「マイナスの財産」の2種類。
不動産以外に預金や価値のある遺産があっても、相続放棄をするとすべての相続する権利を手放すことになるため注意しましょう。
被相続人の預金通帳や所有している不動産の調査を入念に行い、放棄を決定する前に財産を把握しておくことが重要です。
②必要な書類の準備
相続放棄をする相続人は、裁判所に申述書とともに必要書類を提出します。相続人の立場によって必要書類が異なるので注意しましょう。相続放棄に提出しなければならない書類は、以下のようなものがあります。
・相続放棄申述書
・被相続人の住民票
・被相続人の戸籍謄本
・相続放棄をする人の戸籍謄本
・収入印紙(800円)と切手
「相続放棄申述書」は、どんなケースであっても相続放棄に必要な書類です。被相続人や相続人の本籍、住所、氏名、相続を放棄する理由、相続財産の概要について記載します。
また、相続放棄申述書に貼る「収入印紙」(800円)と連絡用の郵便切手が必要です。必要な郵便切手は、各裁判所のホームページで確認しましょう。
③家庭裁判所に相続放棄の申述
必要な書類を揃えたら、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所に提出する必要があります。提出する家庭裁判所はどこでもいいという訳ではありませんので注意してください。
提出する方法は、直接窓口に提出してもよいですし、郵送でも受け付けてもらえます。
書類に不備があると相続放棄できない場合があるので、期日に余裕をもって裁判所に持参して確認してもらうと良いでしょう。自分で書類を揃えるのに不安がある場合は、専門家に依頼することをおすすめします。
④家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届く
相続放棄が受理された場合は、約10日後に「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
この通知書により正式に相続放棄が認められたことになり、被相続人の遺産に関する一切の権利を失います。
不動産相続を放棄する場合の注意点
「土地の相続放棄をすれば、無関係になるから何もしなくていい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産相続を放棄する場合、いくつかの注意点があります。必ず確認してから相続放棄するようにしましょう。
土地だけを相続放棄することはできない
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も含め、全ての遺産を相続しないことを意味します。そのため、土地だけを相続放棄によって手放して、価値のある預金だけを相続して受け継ぐことはできません。
プラスの財産とマイナスの財産を総合的に見て、しっかりと比較したうえで決めることが大切です。
「現に占有」している場合は土地の管理義務を負う
以前は民法940条により、代わりに相続人となった人が相続財産の管理を始めるまで、「相続放棄する前の法定相続人」や「相続財産管理人」が、財産の管理を継続しなければならないと定められていました。
2023年4月1日から施行された改正民法によって、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは」という一文が追記されています。
そのため、たとえば離れて暮らしている両親の家など、手入れに全く関わっていなければ、土地の管理義務を免れるケースも。ただし、被相続人の相続財産である自宅に暮らしている相続人は、「現に占有」している状態であるため、管理義務は消えないため注意が必要です。
不動産相続を放棄するメリット・デメリット
「相続放棄に関心があるけれど、メリットだけではなくデメリットも心配」という方も多いのではないでしょうか。ここでは、不動産相続を放棄するメリット・デメリットをご紹介します。
不動産相続を放棄するメリット
相続放棄によって、遺産をめぐる親族間の争いを防げるのがメリットです。
被相続人のお金や不動産などの資産を細かく分けることは、簡単には話が進まないことも。遺言書が不明確であったり、親族間のコミュニケーションが不足していたりすると、相続トラブルになるケースも少なくありません。手続きや税金の支払いなど、相続にまつわる面倒ごとも回避できます。
さらに、被相続人に借金があった場合、法定相続人が引き継いで返済する必要があります。不動産相続を放棄することで、マイナスの資産を引き継ぐ必要もなくなるのもメリットです。
不動産相続を放棄するデメリット
相続放棄した場合、プラス・マイナスどちらの財産も一切受け取れません。そのため、プラスの資産がマイナスの負債を上回っていた場合、経済的な損失となってしまいます。
また、一度相続放棄をすると撤回ができません。たとえ被相続人が親族が知らなかった財産を持っていたことが発覚した場合でも、相続放棄した後に相続の手続きはできないので注意しましょう。
まとめ
不動産相続を放棄する場合の手続き方法や、注意点について解説しました。不動産の相続放棄の手続きを進めるためには、相続放棄申述書や必要書類を準備しなければいけません。
また、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続放棄の手続きは、不備があると相続放棄ができないケースもあるため、慣れない方にとってはストレスに感じることも。負担を軽減し、確実に相続放棄を成功させるためにも、相続放棄を扱っている専門家に依頼するのもおすすめですよ。