相続した不動産を売却しようと考えているものの、なかなか踏み切れない、という方は少なくありません。
しかし、相続した不動産はすぐに売却すると特別控除などを受けられる可能性があり、負担する費用に大きな違いが出てきます。
このページでは、不動産相続で受け継いだ土地や建物を早めに売却するメリットや特別控除、かかる税金について解説します。
相続した不動産を早めに売却するメリット
特例が受けられる
相続した不動産は約3年以内に売却すれば税金が優遇される特例を適用できる可能性があります。
特例には「相続財産の取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」があり、どちらも相続開始から概ね3年以内に売却することが条件です。
特例の内容については下の項で解説しますが、不動産の売却は3~6カ月はかかりますので、土地や建物の条件によっては売却が長引いてしまうこともあります。
売却の手配が遅かったために、特例の申告期限に間に合わず、税負担が増えてしまわないように気をつけておきたいところです。
相続トラブルを避けることができる
現金とは違い、不動産は分割が困難な資産です。
ほかの相続人と共有名義にすることもできますが、共有名義はトラブルの可能性が多くあるためおすすめできません。
共有名義にしている場合、税金やメンテナンスの支払いは誰が行うか、相続した実家には誰が住むかなどを決める必要があり、片方だけが支払いの負担や居住などのメリットを受けることになることも多く、争いごとの火種となりかねません。
そこで、相続できる財産が不動産しかない場合は、売却してその売却益を相続人で分け合うことで、平等に資産を分割することができます。
維持費を節約できる
不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税を毎年支払わなくてはなりません。
また、空き家のまま放置していると、特定空き家に指定され、税金の優遇措置が適用されず税負担が増える可能性があります。
不動産をきちんと管理出来ていても、建物の修繕や庭の管理などが発生することも多くあります。
相続した不動産の管理費用が負担になるのであれば売却することで維持費を節約することができます。
相続した不動産を売却するときにかかる税金
相続した不動産を売却するとさまざまなメリットがありますが、一方で税金が発生する点には注意が必要です。
売却時に発生する税金の種類は以下となります。
印紙税
不動産の売買契約を結ぶときには印紙税が発生します。
売買契約書に収入印紙を貼付する必要があります。
印紙税額は売買契約書に記載されている売却価格に応じて変わり、以下のようになります。
契約金額 本則税率 軽減税率
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
例えば売却代金が1,000万円の場合、本来10,000円の印紙税のところ軽減税率が適用されると5,000円になります。
譲渡所得税(所得税・住民税)
不動産を売却して利益を得たときは譲渡所得が発生し、所得税と住民税がかかります。
税率は以下の通りとなります。
所有期間5年以下(短期譲渡所得)…39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
所得期間5年超(長期譲渡所得)…20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
相続財産の取得費加算の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費に関する特例です。
譲渡所得とは株式や不動産などの資産を売却することによって生じる所得のことです。
不動産の譲渡所得は給与所得や事業所得とは分けて計算し、所得税や住民税が課されます。
特例の要件は
・相続や遺贈により財産を取得した者である
・その財産を取得した人に相続税が課税されている
・その財産を相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
です。
相続空き家の3,000万円特別控除の特例
空き家の3,000万円特別控除は被相続人の居住用財産を売却した際に受けられる特例です。
この特例を使用すると不動産の譲渡で利益が出ても実質3,000万円の利益分はなかったことにできるため、大きな節税効果が得られます。
つまり、不動産の売却価格が3,000万円以下だった場合、確定申告により特例の適用ができると納税額は0円となります。
ただし、この特例にはいくつかの条件があります。
まず、特例の対象となるために
・相続の開始直前に被相続人が居住していること
・昭和56年5月31年以降に建築された建物であること
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続の開始直前に被相続人以外に居住していた人がいないこと
また売却期間は
・相続の開始があった日から3年を経過する日の年の12月31日までに売却すること
・相続から譲渡までに居住や事業、貸付等に使われていないこと
・売却代金が1億円以下
などと制限が設けられています。
不動産を売却するための必要書類
相続した土地や建物などを売るためは物件購入時の重要事項説明書や登記謄本、土地測量図などの必要書類を揃える必要があります。
不動産業者に売却を依頼するときの必要書類
・登記簿謄本または登記事項説明書
・売買契約書
・物件購入時の重要事項説明書
・登記済権利書または登記識別情報
・土地測量図・境界確認書
・固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
・物件の図面
・設備の仕様書
・建築確認済証および検査済証
・建築設計図書・工事記録書
・マンションの管理規約または使用細則
・マンション維持費関連書類
・耐震診断報告書
・アスベスト使用調査報告書
買主に引き渡しをするときに必要な書類
・本人確認書類
・実印
・印鑑証明書
・住民票
・銀行口座の通帳(振込先口座情報)
・ローン残高証明書またはローン返済予定表
・物件のパンフレット
実家の不動産を相続した場合、書類の保管場所が分からなかったり、書類が足りないという事態も起こりうるため、早めに探しておくと安心です。
特に境界線が確定していない場合、測量を行ってから売却するため、できるだけ早めに準備しておくことが大切です。
相続不動産に関する売却は不動産業者に相談するとスムーズ
相続した不動産を早めに売却するとさまざまなメリットがあります。
控除の適用や税金に関しては複雑に感じることもあるかと思いますので、不動産相続に詳しい不動産業者に相談しておくと手続きもスムーズで安心です。
受け継いだ不動産の売却を検討している場合は早め早めの準備が肝心です。