ー引き継ぎたくない不動産は相続放棄できる?注意点・手続の流れー
2023.12.22
相続財産に実家があるものの、空き家となるため相続したくない、というケースがあります。
不動産を相続すると固定資産税を支払う必要があり、将来的に利用する予定がない場合は相続放棄を検討することもあるでしょう。
不動産相続は相続放棄が可能ですが、相続放棄は一切の相続権を放棄することになるなど、注意点があります。
今回は、不動産の相続放棄の手続きの方法や注意点、家を誰も相続しなかった場合に知っておきたいことなどをご紹介します。
土地や建物は相続放棄できるか
土地・不動産も相続放棄は可能
空き家となった実家などを不動産相続することになったとしても、手続きを行えば相続放棄が可能です。
相続放棄をすれば親の財産であっても自分とは関係のないものとなり、固定資産税の支払い義務などがなくなります。
相続放棄は3か月以内に申し立てる
相続放棄の期限は相続を知ったときから3か月以内です。
期限までに家庭裁判所に申述して手続きを行わなければなりません。
3か月以内に相続放棄の申し立てが行われなければ、自動的に相続を単純承認したものとみなされます。
相続放棄の申し立てが受理されると、相続に一切関わることができなくなります。
そのため、相続放棄はプラスの財産よりもマイナスの財産が上回る場合に検討されるケースが多くあります。
全員が相続放棄するとどうなる?
もし、相続人全員が不動産相続を相続放棄してしまった場合、家はどうなるのでしょうか。
民法239条第2項では「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」としています。
つまり、不動産相続の権利がある相続人全員が、被相続人が所有していた家などの不動産相続を放棄すると、その不動産は国に継承されます。
ただし、不動産を国庫に帰属させる手続きを行うためには、弁護士や司法書士などの第三者を「相続財産管理人」とする申請を行い受理されたあと、その不動産に相続人がいないことを法律的に確定させる必要があります。
相続放棄後の不動産の管理義務は誰にある?
これまでは相続放棄後も管理義務が相続人に残りましたが、2023年4月の民法改正により、相続放棄後の管理義務の考え方が明確になりました。
2023年4月以降は「現に占有している」者に限り、管理義務を負う
これまでは全員が相続放棄した場合、最後に相続放棄をした人が不動産を管理しなければなりませんでした。
しかし、民法改正により、「現に占有」している実態がなければ管理責任が移ることはなくなりました。
「現に占有」とは事実上管理している状態を指します。
たとえば親の家に一緒に暮らしていた相続人は相続財産である実家に「現に占有」していたことになり、相続放棄後も管理義務が生じます。
相続放棄によって空き家になる場合の対処法
たしかに改正後の民法のとおり、「現に所有している」状態でなければ管理義務が発生しません。
しかし、相続放棄により空き家となった不動産をそのままにしておくと、トラブルが発生した場合に損害賠償請求をされるリスクもあります。
相続放棄によって空き家になる場合は次のように対応します。
相続財産清算人を選任する
相続人が明確でない場合、家庭裁判所に申し立てを行い、相続財産清算人を選任します。
一般的には相続人どうしの合意に基づいて相続人のなかから選ばれますが、合意が成立しない場合は裁判所が指定する場合があります。
国庫帰属までの流れ
相続財産清算人の選任申し立てから国庫帰属までの流れは次の通りです。
1.家庭裁判所による相続財産清算人の選任
2.家庭裁判所による選任・相続人捜索の公告
3.相続財産清算人による相続債権者などに対する請求申出の公告
4.相続債権者などに弁済をする
5.特別縁故者が現れた場合は財産分与の検討
6.残余財産が国庫に帰属される
不動産の相続放棄の流れ
不動産相続で相続放棄をする場合の流れは以下のようになります。
STEP1 法定相続人の確認
被相続人が遺言書を遺していない場合、法定相続人が遺産を引き継ぐことになります。
相続放棄にあたってはまず、法定相続人は誰なのか、自分が放棄した場合は誰に相続権が移動するかなどを確認します。
これは相続権移る次順位の人に相続放棄する旨を伝えておかなければトラブルにつながる可能性があるためです。
STEP2 財産調査
一旦相続放棄をするとほかの財産は相続できません。
つまり、不動産相続のみを放棄することはできず、一切の相続権を放棄することになります。
そのため、相続財産の調査は慎重に行う必要があります。
STEP3 必要書類・費用の準備
相続放棄の必要な書類は以下の4つです。
1.相続放棄の陳述書
2.被相続人の住民除票または戸籍附票
3.申述人の戸籍謄本
4.被相続人の死亡記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
また、相続放棄の申述にかかる費用は次のようになります。
・収入印紙(800円)
・書類送付用の郵便切手代
・戸籍謄本などの取得代
STEP4 相続放棄の申述
管轄の家庭裁判所に必要書類を送付し、相続放棄を申し立てます。
管轄の家庭裁判所とは、基本的に相続人が亡くなる直前に住んでいた地域の裁判所です。
STEP5 照会書の返送
家庭裁判所から送られてくる「相続放棄に関する照会書」に回答・返信します。
照会書の内容は申述内容の再確認です。
内容に誤りがあると、相続放棄が受理されない場合もありますので注意が必要です。
STEP6 相続放棄申述受理通知書の確認
裁判所から送付される相続放棄申述受理通知書を受け取って相続放棄が完了します。
売却という方法もある
家が遠方にある、古くて住めない、資産価値がない、などの理由で不動産相続をしたくない場合、相続放棄ではなく売却、という選択肢もあります。
資産価値がないと判断して「要らない」と考えた家はたしかに買い手からの需要も低く、高額での売却が難しいことが予想されます。
しかし近年、都心部から地方に移住する人が増加していること、地方圏の土地取引の件数が増加傾向にあり、絶対に売れないというわけではありません。
不動産相続をして売却をする、という選択肢を取れば、不動産以外のほかの財産の相続権も放棄せずに残すことができます。
とはいえ、相続税や不動産相続にかかる費用などを考えるとマイナスになってしまうケースもありますので、不動産相続に詳しい不動産業者に相談して決めることをおすすめします。
不動産相続の相続放棄は良く考えて手続きをする
不動産は相続放棄により、相続権を放棄できます。
しかし、相続放棄は一切の相続権を放棄すること、相続放棄の取り消しはできないことなど注意点がありますので、よく考えて行うようにしましょう。
また、不動産相続をする人がいない場合、不動産を国庫に帰属させるための手続きなどが必要となります。
早めに専門知識のある不動産会社などに相談して、親の遺した不動産をどのようにするか考えておくと安心です。
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