‐不動産相続の節税対策・「小規模宅地等の特例」とは?‐
2023.10.20
不動産相続の節税対策の1つに「小規模宅地等の特例」の利用があります。
小規模宅地等の特例の要件を満たせば、相続税の大幅な節税効果が期待できます。
今回は、不動産相続における小規模宅地等の特例とはどのような制度なのかをご紹介します。
相続税とは
相続財産の課税価格の合計額が基礎控除額を超えた場合、相続税の申告と納付が必要になります。
基礎控除額の計算式は以下の通りです。
相続税の基礎控除額=3,000万円(600万円×法定相続人の数)
相続税の課税価格は、相続税の対象となる財産の合計から、被相続人の葬式費用や債務などの控除できる費用を差し引いて計算します。
課税価格から基礎控除額を差し引いた額を基準に相続税が課されます。
控除後の金額が0円以下の場合は原則として申告は不要です。
不動産相続の場合、相続財産の価格が大きく、相続税の対象となりやすいため注意が必要です。
相続税の税率と控除額
相続税の税率は複数の税率が段階的に定められている超過累進税率です。
税額には控除額が設定されており、取得金額に税率を掛け、控除額を差し引いた分を支払います。
取得金額1,000万円以下…税率10%、控除なし
3,000万円以下…税率15%、控除額50万円
5,000万円以下…税率20%、控除額200万円
1億円以下…税率30%、控除額700万円
2億円以下…税率40%、控除額1,700万円
3億円以下…税率45%、控除額2,700万円
6億円以下…税率50%、控除額4,200万円
6億円以上…税率55%、控除額7,200万円
小規模宅地等の特例とは
「小規模宅地等の特例」とは、宅地等の評価額を最大8割下げる優遇措置です。
被相続人の自宅や事業で使用していた宅地等は、残された家族にとってその後生活していくうえで重要な財産です。
これらの財産に対して通常の評価額で相続税の計算をすると課税される相続税が高額になり、場合によっては自宅や事業用不動産を売却しなければ税金が支払えなくなる可能性があります。
このような事態を避けるため、一定要件を満たす宅地等については最大80%評価額を下げ、相続税の負担を軽くして残された家族が引き続きそこに住み続けられるように創設された制度です。
この制度により不動産相続で大きな節税効果が期待できます。
小規模宅地等の特例のメリット
小規模宅地等の特例を利用するメリットは、不動産相続の節税効果が大きい点です。
法定相続人でなくても、遺言で土地を取得した場合には特例の適用が受けられます。
土地そのものの価値は変わらないまま、特例の適用により相続税の計算の際の土地の評価額が低くなれば、税負担額も大幅に下がります。
適用には一定の要件がありますが、要件を満たせば高い節税効果が期待できますので、不動産相続を予定している場合は事前に制度について調べておくことをおすすめします。
特定居住用宅地等の特例の適用要件
特定居住用宅地等で小規模宅地等の特例を使用して節税効果が得られるのは次の要件を満たした方です。
配偶者
被相続人の配偶者には特に要件が設定されていません。
無条件に特例を受けられます。
同居親族
被相続人が亡くなったときに同居していた親族を指します。
ここで言う「同居」とは、生活の拠点が同じということです。
住民票が同じ住所であっても、同居の実態がない場合は特例を受けられません。
同居期間については特に決まりはありませんので、亡くなる1週間前から同居していても特例の適用条件を満たします。
ただし、相続税の申告期限までその宅地を所有し、建物に住み続けることが条件となります。
別居親族(家なき子)
別居している親族の場合は、以下の要件を満たすと特例を受けられます。
・配偶者および同居親族がいないこと
・相続開始前3年以内に自分または自分の配偶者の持ち家に住んでいないこと
・相続した土地を申告期限まで所有すること
さらに平成30年4月以降は要件が厳しくなり、次の条件が追加されています。
・「三親等内の親族」または「相続する人と特別な関係がある一定の法人」名義の家に居住したことがない
・相続開始時に相続人が住んでいる家を過去に所有したことがない
二世帯住宅の場合
二世帯住宅に特例を適用する場合、基本的には
・1つの建物に親子が住んでいること
・建物の敷地の名義が親であり、子どもは親に家賃を払っていないこと
が条件となります。
そのほかの判断基準としては「区分所有登記」があります。
区分所有登記とは1つの建物が複数に区切られており、区分ごとに登記をすることを指します。
世帯別の居住空間に区分所有登記がされている場合、子どもの居住用部分は特例の適用が不可となります。
構造上、世帯別に居住空間が区切られていても、区分所有登記がされていなければ親子の居住部分について特定居住用宅地等の特例が受けられます。
相続税の申告は10カ月以内に行う
小規模宅地等の特例を受けるためには相続税の申告が必要です。
相続税は基本的に相続財産の額が基礎控除額を超える場合に申告・納税が必要です。
しかし、小規模宅地等の特例を受ける場合は特例を受ける前の財産額が基礎控除額を超えるかどうか判断されます。
特例を受ける場合は相続税の申告を忘れないようにしましょう。
相続税の申告には期限があります。
相続税の申告・納付期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」です。
申告期限を過ぎてしまうと延滞税が発生します。
10カ月というと十分余裕があるように感じるかもしれませんが、あっという間に過ぎてしまいます。
相続が始まったらできるだけ早く相続手続きを行い、相続税の課税対象となった場合は期限内に申告・納付を完了できるよう、余裕を持って準備することが大切です。
不動産相続の専門家に相談すると適切に節税できる
上でもご紹介した通り、相続税の申告・納付には期限があり、短い期間で遺産分割、相続税の計算、申告・納付、さらに不動産相続をした場合は相続登記手続きをする必要があります。
相続税には多くの優遇制度があり、要件を満たしている場合は利用することで大幅な節税効果が期待できます。
相続税対策は生前から準備しておくと相続税の節税につながるケースも多くあるため、早めに準備をすることが大切です。
特に不動産相続の場合は引き継いだあとの活用方法なども問題になってきますので、不動産相続の手続き、節税方法、さらには不動産活用まで一括で相談できる専門業者に依頼するとスムーズです。
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