不動産相続には期限がある?放置した場合の問題点とは不動産コラム一覧

不動産相続には期限がある?放置した場合の問題点とは

2022.07.22

 

親や親族が亡くなり、不動産を相続する場合は相続登記の手続きが必要ですが、手続きはいつまでに行えば良いのでしょうか。

 

不動産相続をする場合、相続放棄をする場合の期限や放置した場合のリスクなどについて解説します。

 

相続税の申告と納税の期限は10カ月以内

相続の法的期限の1つとして「相続税の申告と納税」の期限があり、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に相続する財産を確定し、相続税を申告・納税する必要があります。

 

この期限を過ぎると延滞税が科せられてしまいますので注意が必要です。

 

もし、10カ月以内に遺産の調査や分割協議が終わらず、相続人の相続内容が確定しない場合は、法定相続分で仮申告を行っておき決定後に修正申告を行うか、申請期限の猶予申請をするという方法もあります。

 

相続放棄の期限は3カ月以内

財産よりも負債の方が多い場合など、相続をしたくない場合は相続放棄の手続きをします。

 

相続放棄をすると被相続人の負債分を相続する義務がなくなります。
また、相続しないことで家の維持管理のための手間や費用をはじめから避けることができます。

 

一方で相続放棄は全ての遺産を相続放棄しなければなりませんので注意が必要です。
マイナスの財産を相続放棄できますが、同時にプラスの財産も相続放棄することになります。

 

さらに相続放棄は撤回することができません。
したがって、十分考慮した上で相続放棄をすることが大切です。

 

相続放棄の期限は相続開始があったことを知った日から3カ月以内です。
この期間を熟慮期間といい、相続放棄をする場合は熟慮期間内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

 

法改正による3年以内の相続登記の義務化

近年問題になっている「所有者不明土地」の解消を目的として不動産登記法が改正され、これまでは義務化されていなかった相続登記を3年以内に行うことが義務化されることになりました。

 

ここからは不動産登記法の改正内容をご紹介します。

 

不動産登記義務化は2024年4月1日以降に施行

2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)」が決定され、2021年4月21日の参議院本会議で成立しました。

 

これにより、相続で不動産取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられることになりました。
相続登記の義務化は2024年4月1日以降に施行されます。

 

これに伴い、住所変更登記も義務化されますが、施行日は公布後5年以内の政令で定める日とされており、現段階で施行日は未定です。

 

相続登記の期限は3年以内

新しい不動産登記法のルールでは、不動産の相続人に対して
「相続が開始して所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならない」
としています。

 

つまり以下の事実を知ってから3年以内に相続登記を行わなければなりません。

・被相続人が死亡した事実
・自分が不動産を相続して所有者となった事実

 

期限内に相続登記をしなかった場合10万円以下の過料

相続登記が義務化された後、つまり改正法の施行日である2024年6月1日以降に期限内に相続登記を完了しない場合、10万円以下の過料がペナルティとして課されることになりますので注意が必要です。

 

改正法施行後はなるべく早めに相続登記をするようにしましょう。

 

相続人申告登記制度の新設

改正不動産登記法では新たに「相続人申告登記」という制度が作られました。
これは不動産を相続した人が法務局に対して自分が不動産の相続人であることを申し出て登記してもらう制度です。

 

遺産分割協議の長期化など、相続登記を期限以内にすることが難しい場合もあります。
そこで、自分が相続人であることを法務局に申請することにより、期限内の相続登記の義務を履行したことにしてもらえる制度が相続人申告登記制度です。

 

具体的な申請方法の詳細は未定ですが、相続人が単独ででき、添付資料も簡易なものになるだろうと言われています。
何らかの事情ですぐに相続登記が行えない場合は活用するようにしましょう。

 

不動産相続を放置した場合のリスク

不動産登記は放置すると以下のようなリスクがあります。

 

不動産の売却・担保設定を行えない

不動産の名義を変更しない限り、不動産を売却したり担保にすることはできません。
すぐに売却する予定がない場合でも将来的に売却が困難になる可能性があります。

 

相続関係が複雑化する

相続登記を放置している間に相続人が亡くなってしまった場合、次の相続人が登記手続きをする場合は相続登記を二重に行わなければならないなど、手続きが複雑になります。

 

年数が経過したことにより登記の必要書類の入手が困難になるなど、大変な手間を要してしまいます。

 

他の相続人の債権者から差し押さえられるリスク

相続人の中に負債を抱えている人がいて支払いが滞っている場合、債権者に不動産の相続持ち分を差し押さえられてしまうリスクがあります。

 

不動産は遺産分割協議が終わるまで、相続人が法定相続割合に応じて共有している状態となります。
つまり、債権者は負債のある相続人の法定相続分を差し押さえることができるのです。

 

遺産分割協議が終わった場合でも相続登記を済ませていなければ債権者に対して不動産が自分のものだと主張することは難しくなります。

 

相続登記にかかる費用

相続登記は不動産がある住所地管轄の法務局で行います。
その際に登録免許税や必要書類を準備するにあたり一定の費用がかかります。

 

必要書類を取得するための費用

相続登記の申請には申請書以外に被相続人と相続人全員の戸籍謄本や住民票の写しなどの書類を提出します。

 

戸籍謄本は1通あたり450円程度~750円程度かかり、住民票の写しは1通300円程度かかります。
書類が多い場合や被相続人が1人で書類を取り寄せなければならない場合、ある程度の費用がかかってしまいます。

 

登録免許税

不動産登記の際には登録免許税を支払うことになります。

 

相続の登記申請の場合、
不動産の固定資産評価額の1000分の4(0.4%)という税率となります。

 

専門家への報酬

相続登記は自分でもできますが、相続関係が複雑な場合や不動産の物件数が多い場合は専門家に任せた方がスムーズです。
専門家に依頼した場合、専門家への報酬が発生します。

 

不動産の相続手続きはなるべく早く行う必要がある

不動産相続の期限について解説しました。

 

相続税の申告・納税や相続放棄など、相続には期限があります。
相続登記の義務化はまだ始まっていませんが、放置しているとさまざまなリスクがあります。

 

相続手続きは多くの書類を用意する必要があり、期限はあっという間に迫ってきてしまいます。
相続が開始したらなるべく早めに手続きを済ませるようにしましょう。

 

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